皮膚疾患でも入れる未来型プールを目指して

和歌山市立「市民温水プール」の実践

 和歌山市に知る人ぞ知るプールがあります。このプールには「ある目的を持った装置」が導入されています。導入されたのは1995年(平成7)4月のこと。もう28年も前のことです。当時は全国の行政から視察が訪れ、テレビの取材もたくさん来ました。
 このプロジェクトで中心的な役割を担ったのは、当時、和歌山市の教育委員会・教育施設課に在籍していた瀧文裕氏。瀧氏が作成してくれた資料を参照しながらこの「和歌山市立市民温水プール」がどのようなプールなのかご紹介します。

市民温水プールにおける浄活水装置導入までの経緯(報告書より転載)

 和歌山市立小学校、中学校において、何らかの皮膚のトラブルを持つ児童・生徒が約850人(平成6年度調べ)おります。この児童・生徒たちは、塩素消毒したプールで水泳すると痛みや刺激があったり、症状が悪化する等の理由で水泳の時間には、見学せざるを得ない状況にありました。
 和歌山市としては、教育の機会均等を保つためにも、また、この児童・生徒たちに水に親しむ楽しさを体験してもらうためにも、学校プールで水泳が可能となる解決方法はないかと調査、及び情報収集しておりました。
 そんな時に、茨城県(ひたちなか市)勝田スイミングスクールに、皮膚疾患のある人でも水泳が出来るプールがあるとの情報があり、すぐに勝田スイミングスクールの礒﨑圀雄社長に連絡をとり、実際の状況調査、視察体験水泳をお願いしました。
 平成6年6月に、和歌山市から助役、教育委員会施設課長、施設担当の3名が、現地体験をさせていただいたところ、水がやわらかく、塩素のにおいが気にならず、肌もすべすべになり、とても良い気持ちを体感することができました。
 これについて、礒﨑社長様に色々と教えて頂いたところ、生体エネルギーを応用した教育型のプール施設用浄活水器『すこやか』を濾過循環サイクルの中に設置した結果、皮膚疾患をお持ちの方にも安心して水泳していただけるだけではなく、症状が改善される例も多いとのことでした。
 その後、いろいろと検討を重ね、小中学校の児童・生徒だけでなく、一般の市民の方々にも年間を通じてご利用いただける市民温水プールへの導入が決定され、平成7年4月に浄活水装置が設置されました。

皮膚疾患の子供たちも泳げるプールの完成

 市民温水プールに「すこやか」が設置され、今までプールに入ることのできなかった皮膚疾患の子供たちが泳ぐことのできるプールを和歌山市はつくりあげました。皮膚疾患の子供たちには無料券が配布され、他のプールでは塩素がしみて皮膚が痛くて入れない子供たちから「ここなら入れるし、夜もかゆくならない」さらにプールに入ることで症状も改善されたという反応がアンケートにはいくつも記されています。
 塩素の基準を満たしても皮膚疾患の方が入ることのできるプールは日本初、もしかしたら世界初かもしれません。その後も「すこやか」を導入したプールは全国に11ヶ所できました。
 もちろん、皮膚疾患をもたない方にも、温泉に入ったときのような「皮膚がすべすべになる」感覚は多くの人が感じており、水に浸かっているときの安心感から「お母さんのお腹の中にいた頃を思わせるような水」と表する人もいます。

利用者のアンケートより(抜粋)

 利用者の声を聞くと、体質にあった子供や利用回数の多い人ほど、体調がよくなっている傾向が見られる。
 総計からみて、良くなったとする人は約5%に過ぎないが、2年以上利用している人の総数から良くなったとする人は約9%あり、約1割の人の体調がよくなったと答えている。
 右記の結果だけ見れば、大きな成果を出しているようには見えないかもしれません。しかし皮膚疾患でプールに入ることができなかった子供が入ることのできる成果は100%出せています。そして、毎日入るわけでもないプールに入って体調の改善が見られる人が1割もいるというのは驚くべき数字ではないでしょうか?
 人の健康は、毎日の食や環境、意識の持ちようなど、多くの要素の影響下にあります。毎日このプールに入っていればかなりの子供たちの症状が改善に向かう可能性はあります。同様に、日常的な食生活と住まいの環境を変えることで、改善することはいくらでもできるのです。

なんで疲れへんのやろ??

 瀧氏は導入前に視察に行った勝田スイミングスクールでの体験をこう語ってくれます。このプールは、水の生命力を高め、泳ぐ人の心身の健康に寄与する生体エネルギー応用プール用教育型浄活水器「すこやか」の一号機が設置されたプールでした。(※)
 「礒﨑社長がプールで足にヒレをつけて200m泳げといいはるんですよ。日頃全く運動なんてしてないからできるわけないって言うてるのにね。でもやってみたら泳げてしまいましてね。1時間以上プールに入っていて、帰りはヘトヘトかと思ったら、逆に元気になってるんですわ。翌日も筋肉痛になるだろうと思っていたら、それもまったく出ませんでね。自分で体験したことながら不思議で仕方なかったんですわ。でもこうして体験できたことはとても大きかったです」
 勝田SSに見学に行った3人のうち、助役以外はまったく信用してなかったといいます。しかし実際にプールで泳いで体感した経験は嘘をつきません。これ以降、3人とも前向きにプロジェクトを進めるようになったそうです。

※勝田SSは東日本大震災で被災して閉業してしまいました。「すこやか」は水誘導翻訳装置「きわみ」をプール向けに開発した商品です。現在はプール用も「水誘導翻訳装置きわみ」シリーズに統一されています。

「プールを変えたい」と思った人物

 「皮膚疾患の子供たちでも入ることのできるプールにしたい」という発想は、和歌山市教育委員会の教育長でその後、市の助役になられた浅井周英氏の想いから始まっています。
 浅井氏自身アトピー性皮膚炎の症状があり、皮膚疾患のある子供たちが水泳の時間にプールに入れずにプールサイドで座っているのを見て「この子たちが入ることのできる安全なプールをつくりたい!」と思ったのがきっかけでした。そしてある本に勝田SSのプールが紹介されているのを見つけ、瀧氏とともに3人で視察に赴きます。
 浅井氏の発想がなければこのプロジェクトが動くことはありませんでした。あらゆる出来事は誰かの「想い」からうまれます。その想いが強ければ強いほど、深ければ深いほど、広ければ広いほど、実現に向けて動き出す原動力になっていきます。浅井氏の最初の原動力をサポートしてくれたのが、施設課の小橋氏・瀧氏であり、勝田SSの礒﨑氏、見学者が来たら毎回案内してくださった島村幸夫氏をはじめ、関わってくれたすべてのみなさんと「すこやか」そのもの、そしてそこで息吹を吹き込まれたプールの水たちです。

浅井元教育長の教育観

 浅井氏の教育観は、日本の覚者と称される森信三氏の教えなしにはあり得なかったと言います。
 森氏は「学者にあらず、宗教家にあらず、はたまた教育者にあらず、ただ宿縁に導かれて国民教育の友としてこの世の生を終えむ」という自銘のことばに従い「私の内面には、常に全国五十万の国民教育者の姿が消えたことはない」と明言し、一万回以上にわたって、全国津々浦々の講演行脚に明け暮れた方です。(※)
 深い哲学と精神性の伴った宇宙観は、人の想いを実現させるエネルギーの土台となります。浅井氏の子供たちに対する想いと、市長に直談判してまで今までにないプールを実現しようと尽力された想いが結実したのも、根底にある哲学・精神性の力強さがあってこそ。
ご自身が園長を務める幼稚園でも「きわみ」の水を使っておられ、周りの園がインフルエンザで休園されても、浅井氏の園は一切そうしたことがなく、これも「きわみ」の水の効果だと実感されています。
 88歳になった今でも自分で車を運転して取材の場にお越しいただき、とても90歳近い年齢とは思えない力強さでお話下さいました。

※森信三の世界より引用
http://www.jissenjin.or.jp/profile.html
森氏は膨大な著書を残され、中でも「修身教授録」は大ベストセラーになっている。

水による植物育成の違い

 ここで、わかりやすい事例をご紹介します。下の写真は、水の生命力を高めた「きわみ」の水と、一般の水道水で、植物の生育がどれだけ違うかを比較したものです。右が「きわみ」の水をつかったもの、左が「一般の水道水」をつかったもの。水の違いだけで、根にも葉にもこれだけ生育に差がでるのです。
 これをプールの水に置き換えてみると、プールの水が人にどのような影響を与えているかお分かり頂けると思います。

プールで起きたこと(コスト面など)

 次表では、「すこやか」を導入した3つのプールで起きた変化をご紹介します。

プールで起きたこと(体感編)

 競泳のコーチとして勝田SSに勤めていた田村弘美さん(会員番号266)にプールの水の違いについて話をお聞きしました。
 「当時の勝田SSには、有名スポーツ選手が何人も怪我のリハビリに来たり、シーズン前の調整に来ていたりしていました。トップアスリートほど、体感的な違いを感じることができるので、変化が分かるのだと思います。
 一言で言うと、肉体的な能力を引き出してくれる水になっていると感じています。
 トップレベルの水泳選手が来た時に話を聞くと、彼らは会場によって、かたい、重い、泳ぎづらいといった水の違いを繊細に感じていると言います。調子がいいときには、水が手足にうまくかかる感覚で水を捉えて泳ぎやすくなり、この感覚を勝田SSの水ではいつも感じることができたそうです。
 選手は試合の時には抵抗を最大限減らすために全身の毛を剃ります。しかし、勝田SSの水では剃らなくても剃ったときのような抵抗がない感覚もあったそうです。
 感覚的になってしまうので、説明するのも難しいのですが、良い水だと自分の体の理想的な使い方を習得でき、自分では気づかないことを環境が気づかせてくれる。やればできることを水が引き出してくれる。そんな水になっているのだと思います。
 実際に、勝田SSのジュニアオリンピック水球チームが全国大会に進出して準優勝したり、そんなに追い込んで練習して無くても教え子が関東大会に行っていました。
 体調面でいうと、塩素ガスは水面に滞留しやすいのでずっとプールに浸かっているとその影響ですぐに喉を痛めていました。これが「すこやか」を導入してからほぼなくなりました。空気も以前よりも爽やかになり、髪の毛が茶色くならなくなったのも大きな変化です。何より5年間も水を変えなくても全く問題なかったというのは驚きですよね!」