みんなで紡ぐ理想の繊維の物語

 生体エネルギー技術を駆使した繊維を開発し、その繊維を健康をキーワードにしたさまざまな商品に仕立て上げているのが、株式会社アイアイである。

明確な戦略で、やらないことを決める

 京都駅から徒歩 5 分のところにある株式会社アイアイ。現在従業員 43 人のこの会社は、創業以来 26 年連続黒字。社員旅行は毎年海外。とても小さな企業でありながら、野球部を抱え、滋賀県大津市に 1 万坪以上ある野球場・保養所施設も所有している。

 生体エネルギー技術を使った繊維でつくる彼らの主力商品は布団。その布団を取り巻く物語は、経営戦略論やマーケティング理論の教科書に成功事例として載せられるぐらい完璧で美しいものに仕上がっている。その「物語そのもの」が彼らの企業としての最大の強みである。そして、それを生体エネルギー理論がしっかりと裏打ちしている。彼らの戦略は明確である。「毎日無理なく使える(毎日価値を感じることができる)」+「オンリーワン」+「健康」。この 3 つが重なったものしか扱わない。だから、現在の主力商品は、毎日使う「布団」である。生体エネルギー技術を活用しているので、当然オンリーワンであるし、寝るということは、毎日何時間も使うということなので健康への寄与が最も大きい商品でもある。

 生体工ネルギーとアイアイをつなぐ窓口になっている池田雅人専務取締役は、「商品も価格帯も、わざと増やさないようにしている」と語る。商品が増えれば、それは販売担当の社員にとっては逃げ道になる。他の商品という逃げ道がなければ、彼らは布団だけを売るために必死に頑張らざるを得ない。また、価格帯も絞っている。「もう少し安い商品なら売れるかも・・」という言い訳もできない。だから、たとえ分数の足し算ができなくても、自分なりのエ夫を重ね、布団だけは人一倍売れる。そんな営業社員もいる。実は、アイアイは生体エネルギー技術を使った健康ジュエリー(株式会社内藤貴金属製作所が製作)も同じような価格帯で扱っている。しかし、布団の営業担当は、ジュエリーを売ってくると叱られる。

 生体エネルギーは不可能を可能にする技術である。言い換えれば、やろうと思えば、何でもできる技術である。しかし、それを企業経営の現場にそのまま持ち込むのは現実的ではない。何でもできるからと言って思いついたことを何でもやろうとすると、経営資源はいくらあっても足りなくなるからである。アイアイが成功しているのは、まずは、やらないことを明確にしているからであると言っても言い過ぎではないだろう。

関わる人たちみんなを幸せにする「プラチナウェーブ®︎寝具」

関わる人たちみんなの問題を解決する

 また、彼らは、布団に関わるすべての人たちを幸せにする仕組みをつくっている。製造から販売までの工程に携わるすべての人を大切にしている。全員でひとつのチーム。すべてが同じ思いであって欲しいと願っている。

 アイアイが扱う生体エネルギー布団は、顧客にとって素晴らしい商品になっているだけでなく、それを扱う問屋や小売店にとっても素晴らしい商品になっている。顧客に感動してもらうためには、ます、売る側の人たちにも感動してもらう必要がある。だから、問屋が小売店に行くのに、アイアイの営業社員が同行する。布団の感動を小売店の担当者に直接伝えるためである。布団は決して安いものではない。しかし、30 万円の布団でも、50 万円払ってでも欲しいと思えば、顧客は惜しいとは思わない。大切なのは理解ではなく感動。感動をした結果、売る人が売りたいと強く思うまでは、アイアイが取引を始めることはない。

 売る人が感動したら、一緒に販売計画をつくる誘導をする。その人たちが自分でそれを翻訳できるレベルになるまで実際の販売には入らない。そのレベルに達したら、布団を売る日を限定して設定し、その日には、よく売れる営業社員をアイアイから派遣する。売れてから初めて伝票を切るので、問屋も小売店も、あらかじめ仕入れる(仕入れたものが売れ残る) というリスクを負わなくてよい。営業社員の旅費・交通費もアイアイが持つ。必す売れるからそれで OK だそうである。

 彼らの布団を売っている小売店は、寝具店ではない。既存の布団(たとえば、競合しているメーカーのもの)を扱っている店では、利益が相反するケースが起き、不幸せになる人たちが出るからである。

 小売店はすべて「いいお客様を持っているが、売れるものがない」ところである。高額品を扱うのに慣れていて、お客様と店員(店主) の間の信頼度が高い店。たとえば、呉服屋(着物は毎日は買わない)、時計屋(時計は毎日は買わない)、街の電器屋(本業の商品は量販店に価格で負ける) などである。こういった店はいま困っている。その困っている部分をアイアイが解決し、みんなが幸せになるのである。「この2日間で(小売店が)1 ヶ月食べていけるだけ布団を売ります」というのが、小売店に対するアイアイのキャッチフレーズ。もちろん、問屋や小売店にしっかりと利益が落ちるような価格設定をしている。小売店は、その 2 日間以外の残りの日々で、布団を買った人たちに他のお客様を紹介してもらう。それは、店にとっても新しい顧客の開拓になる。社員給与は完全固定。歩合制にすると売るために無理をするリスクがあるからである。また、布団をアイアイが直販することはない。

効果の体感が感動を呼びこむ

 布団の価値を顧客に伝えるためには、布団の材料になっている綿のシートを使う。下に敷いたシートが敷き布団。その上に手を置いてもらい、その上から、掛け布団シートをかける。そのまましばらく話をする。手が温まり、汗をかく。手にはカラダのさまざまな部分のツボが集中している。汗をかいた場所によって、カラダの悪いところがわかるという仕掛けである。その説明をするために、営業社員はみな、手のツボの図を持ち歩いている。

 東洋医学では、人の皮膚には「気と血」のエネルギーの流れる道(経絡と言う)があると考えられている。ツボ(経穴とも言う) とは経絡上にある主要な場所で、気と呼ばれるエネルギーが集まりやすく、また同時に悪い物も集まるとされる。主に内臓の不調が気の流れを停滞させ、それぞれの臓器と関わりの深いツボの気の出入りを悪くさせる。当然そのツボに悪い物が集まる。ところが、生体エネルギーの高い綿で手を包むと、本来与えられている体の働きが優性に動く。内臓の悪いところと繋がっているツボに自らエネルギーを集め、熱を発し、集まった悪い物を汗として外に出す動きが起きる。

 こうやって短時間で効果を体感して感動した顧客が布団を買ってくれる。しかし、買ってもらった後のことも、アイアイは大事にしている。人は、買ってからのほうがいろいろなことを聞きたくなる。実は、アイアイは、大学などの研究機関と共同でさまざまな検証データを取っている。買ってもらった後にそのデータを顧客に見せるのである。

 たとえば、図 1 は羽毛布団とアイアイの布団の比較実験結果である。布団に入って 3 分後には、アイアイの布団のほうが統計的に有意な水準で心拍数が下がっている。また、アイアイの布団のほうが副交感神経の活動が活発になり(副交感神経が優位になり)、精神的に落ち着き、眠りに対して良い状態になる。自律神経のトータルパワーの値もアイアイのほうが高い。これは自律神経の働きがより正常であることを示している。こういったデータを見た顧客が、「(高額商品の購入という) 自分たちの下した決断は正しかった」と再納得するのである。

教科書に載せられるぐらいの美しい物語

 経営戦略論やマーケティング理論の教科書には、具体的な戦術をつくるときに使う「 4 つの P」という考え方の枠組みが必す載っている。Product(どんな特徴をもった商品にするか)、Price(それをいくらで売るか)、Place(それをどこでどうやって売るか)、Promotion(価値をどうやって伝えるか) という、4 つの側面。このそれぞれについて具体的な戦術(物語) をつくれば、考える要素にモレがないという枠組みである。ここで大切なのは、4 つの側面すべてが自分たちの戦略と矛盾せず、また 4 つの P どうしもお互いに矛盾しないような物語を書くことである。

 「毎日無理なく使える」+「オンリーワン」+「健康」。この3つが重なったものしか扱わないというのが、アイアイの戦略。Product は、生体エネルギーを使ったオンリーワンの健康布団。Price は、ニトリよりは高いが、デパートの高級羽毛布団よりは安い。呉服や時計を専門店で買う顧客が、価値さえわかれば、充分に払える価格帯に設定してある。そして、その価格帯以外の商品は持たない。Place は、問屋を通しての小売店。布団が専業ではないが顧客との信頼関係が強い店で、アイアイの布団専門営業社員がとことん手伝って売る。ちなみに問屋にも小売店にもきちんと利益が落ちる価格にもなっている。Promotion では、原材料の綿のシートを使って体感し感動してもらう。買った後にはデータも見せて価値をきちんと伝える。どこにも矛盾がない。完璧で美しい物語が書かれている。

 そして何より、現代経営で最も大切なことも実現している。会社の利益を追求するだけではなく、製品をつくる人、営業担当者、問屋、小売店、顧客と、関わる人たちすべてが幸せになる「自分の役割にベストを尽くしタスキを繋いでいく駅伝のような仕組み」が完成しているのである。生体工ネルギー技術では、勾配を利用して、物が直接手渡されなくても、エネルギーだけを次から次へと受け渡すことができる。しかし、アイアイの場合は、布団という生体エネルギー商品そのものが「タスキ」になり、製品をつくる人たちから顧客まで、少しずつ成長しながら受け渡されていく。アイアイの経営者が紡いだ美しい物語を生体エネルギーが裏から支えているのだ。関わった人たちが幸せにならないわけがない。そしてさらにその先で、アイアイの布団で毎日寝て、健康になり、幸せになった人たちが、世の中、そして、人類字宙自然に貢献しているに違いない。

深部体温を維持する腹巻

 とは言え、アイアイがつくっているのは布団だけではない。戦略に合致していれば、もちろん、他の商品もつくる。たとえばボディウォーマー(腹巻)。図 2 は、びわこ成蹊スポーツ大学の測定結果である。横浜にあるOffice LAC-Uの石川三知代表は「アイアイさんの繊維で一番驚いたことは、この深部体温のデータです」と語る。彼女は、フィギュアスケート荒川静香選手・高橋大輔選手、陸上短距離末續慎吾選手を始め、数々のトップアスリートに栄養指導を行い、JOC 強化スタッフ(医科学) にも就いていた「スポーツ栄養アドバイザー」の第一人者。リオ五輪の選手もサポートしていたし、現在も東京五輪を目指すアスリートたちの指導もしている。「この(深部体温の) データは、関係者誰に見せても、びっくりします。表面体温を上げるのは比較的簡単です。でも、深部体温を維持するのはとても難しいんです」。

 他社製品では、へそ上・鳩尾などの体表温度は大きく上昇するが、直腸で計測した深部体温は 1 時間で 2 度近く低下している。一方、アイアイが布団に使っている繊維(プラチナウェーブ®)でつくったボディウオーマーは、1 時間経っても、深部体温の低下はわすか 0.2 度。37 度を少し切ったレベルでほぼ一定に保たれている。ちなみに、深部体温は 1 度下がると免疫力が 30 %ダウンすると言われ、これを 37 度前後に保つことが健康を維持するカギになる。

さらなる高みを目指すアスリートのみなさまへ

 このようなデータをいくつも見て、また自身でも効果を体感している石川代表に紹介され、アイアイの製品を使っているトップアスリートたちも実は多い。遠征など移動が多い彼らが布団を持ち歩くわけにはいかない。そういったニーズに応え、アイアイは、持ち歩きできる薄さのリフレッシュマットも開発している。移動中の乗り物の中などでこれを敷くと感じる疲労感が違う、疲労の蓄積が軽減されるという評判らしい。また、「このマットの上では、新体操の選手も競泳の選手も柔軟性が上がっていました」と選手たちの練習にも付き合う石川代表。それだけではない。カロリー制限や栄養不足でなかなかカラダが温まらない新体操の選手たちが、このマットの上だと、みるみる顔が赤くなり、ウォーミングアップのスピードが速くなったそうである。

アスリートが布団の代わりに持ち歩くという
「リフレッシュマット」

 「でも、そういうトップアスリートたちって、うちの商品をお互いに紹介してはくれないんですよ」と池田専務。たとえばオリンピックに出場できるのは、個人競技だと 1 種目 1 人か 2 人である。団体種目であっても、メンバーに選ばれるのに厳しい競争がある。お互いがライバルなので、よい物を見つけたとしても、その効き目がよければよいほど、お互い秘密にするそうである。この記事を読んだトップアスリートのみなさま、「生体エネルギー」はドーピングの心配なく能力を伸ばす、とても有効な手段になり得ます。ぜひご検討ください。そして、これからのご活躍を心から祈っています。

(本記事は2017年に執筆されたものです)