食品の能力が上がる冷蔵庫

 生体エネルギー技術を応用し、中に入れた食品の能力が上がる冷蔵庫をつくったのが株式会社トーレイである。

美味しさの加算

 「チキンカツの鶏肉で、皮と身の間の脂の旨味がはっきりわかる」「暖かくなると味が薄くなるはずのキャベツが、冬の味がする」。2016 年の春、業務用冷蔵庫「蘇鮮蔵(そせんぞう)」を導入した愛知県田原市のとんかつ屋「とんかつやまと」を訪れたお客さまの感想である。「やまとって本当に美味しいよね」というお客さまの声が明らかに増えたそうだ。「お子さんたちがダイレクトに美味しいと言ってくれるようになりました」とやまとの太田健一郎さん。「もちろん、野菜の持ちもよくなりました。ロスがさらに減りました」と彼は続ける。とんかつやまとは、水誘導翻訳装置「きわみ」や電気誘尊翻訳装置「さとり」などの生体エネルギー機器を何年も前から導入済である。それでもなお、生体エネルギーの技術の特徴のうちの一つである、資材を加算していくとさらによくなるということを証明するような反応が彼を驚かせている。

 蘇鮮蔵をつくっているのは、1963 年創業の株式会社トーレイ。山梨県甲府市にあるトーレイは、業務用冷凍.冷蔵庫、空調、厨房設備の設計施工、厨房機器、各種食品加工、調理機器の設計製作、ステンレスを初めとする各種金属の板金加工といった業務を行っている。2006 年に生体システム実践研究会に入会し、2009 年 9 月に水誘導翻訳装置「きわみ」Ml-62T、電気誘導翻訳装置「さとり」H-Wl2 を導入。その後も高圧用「さとり」目的別(食品・工業・生体システム用)を追加し、しらべ E ・しらベ ES も導入。充実した生体エネルギー設備と高い金属加工技術と確かな信頼から、現在は、株式会社マルセイから、水誘導翻訳装置「きわみ」全シリーズの製造を一手に任されてもいる。

水誘導翻訳装置 新次元「きわみ」を組み立てる

野菜が有り得ないほど日持ちする

 蘇鮮蔵はそんな彼らが創り上げた新製品である。通常の冷蔵庫は入れたものを冷やすことのみが目的である。それに対して、蘇鮮蔵は、食品の品質を高め、内容・機能・性質を「栽培し直し」、生体エネルギーを高めることを目的とした、今までにない冷蔵システム、いわば冷蔵システムの理想郷を実現している。

 この蘇鮮蔵もまた、生体エネルギー理論と技術の産物である。通常の電源に蘇鮮蔵のコンセントを差し込むと、生体エネルギ一金属を内蔵した「いるなけみ電源」を電気が通過し、その能力が高まる。冷蔵庫内の棚などの部材は、トーレイが導入している電気誘導翻訳装置「さとり」を使った電気で溶接されている。冷蔵庫の中に入っている「いるなけみプレート」も、冷蔵庫が乗っている「いるなけみ岩盤石」も、肝心な冷媒装置も、すべて生体工ネルギーを強化する仕組みが入っている。その結果、中に入れた食品の能力が高まるのである。

 食品の「能力が高まる」とはどういうことであろうか。下図はレタスでの実験結果である。一般の冷蔵庫に入れたレタスは、40 日後には萎れて変色しカビも生え、とても食べられる状態でない。一方、蘇鮮蔵に入れたレタスは、40日経ったとは思えないほど変化が見られない。しかも、まだ充分に美味しい。

 生体エネルギー技術を使った農法では、環境を整えることで、作物を構成しているタンパク質の結合力を強め、長持ちさせる。具体的には、農業現場で生体工ネルギーを高めた土や肥斜や水を使うことで、土壌の能力が高まり、一般的には硫化水素を発生させる恐れがあり多量に使うことはできない「硫黄」を効果的に使うことができるようになる。それが、たんばく質の高次構造を支えるジスルフィド結合( S-S 結合)の強化につながり、作物が長持ちするようになるのである。蘇鮮蔵に入れることで、収穫後にもかかわらずそれと同じことが行われる。それが「栽培し直す」である。

 そして、もちろん、蘇鮮蔵の威力は日持ちだけではない。野菜も肉も他の食物も、蘇鮮蔵の中で栽培し直されると、能力が上がり、美味しくもなるのである。美味しさは、食べ比べればわかるとは言え、味覚は個人差も大きい。トーレイは今、食味の官能試験に加え、成分分析にも取り組んでいる。理化学研究所と共同で実験を始めているそうだ。

病原菌が増えない厨房機器

 理想郷は新製品の冷蔵庫だけで実現しているわけではない。トーレイは幅広く厨房設備を手掛けている。彼らの製品を使うと、病原菌の発生が明らかに抑制されるという実験結果も出ている。たとえば、生体エネルギー技術を使って溶接した金属シャーレと一般の金属シャーレを比較すると、チフス菌・日和見感染菌の発生が 99 %以上抑えられたというデータがある。また、厨房用のシンクを使って微生物の繁殖状況を実験した結果では、大腸菌・サルモネラ菌・黄色ブドウ球菌の増殖が、他社製品よりも 1 万倍も抑えられている。これらはいずれも、トーレイ独自の実験ではなく、第三者機関(シナプテック株式会社、理化学研究所、山梨大学)との共同研究の成果である。

 つまり、トーレイの製品を使用すると、食中毒のリスクが大幅に軽減されることが第三者機関によって証明されているのである。細菌などの微生物はその種類によって住みやすい環境ステージが異なる。病原体の多くは、生体エネルギーの低い環境を好むため、生体エネルギーが高い環境では繁殖しにくくなるのである。

社員の意識も変わった

 「霜のつかない冷蔵庫が作れるかもしれない」と聞いたのが、生体エネルギーに興味を持ったきっかけと矢崎忠芳社長は語る。顧客であった給食センターから、地元山梨県で生体工ネルギーを広める活動をしていた源株式会社を紹介してもらう。長野での勉強会や展示会に何度か参加する中で、「自分は今まで勉強していなかった」ことに気付いたと彼は言う。「食品を冷やすことをやっていたのに、機械の勉強だけしていた。食品のことも考えないと、いい冷却設備はつくれない」。

 彼はまず、源株式会社の芦沢代表に協力してもらい、生体エネルギーの電源で処理したステンレス板と、その処理をしていないステンレス板で、マグロ冷凍肉の解凍実験を行った。普通の冷蔵庫の中で解凍したところ、生体エネルギー処理をしたほうでは、ドリップがまったく出なかった。また、そのマグロを解凍したまま零度ぐらいの冷蔵庫に 2~3 ヶ月入れっぱなしにしてみた。生体エネルギー処理したステンレスに乗せたほうは、赤いままであったのに対し、そうでないほうは、黒く干からびた。そして、菌の検査をしてもらったら、生体エネルギーのほうのマグ口は、まだ充分食べられるという評価をもらった。

 矢崎社長は生体工ネルギー技術の導入を決意する。しかし、役員はこぞって反対した。「私も最初は反対でした」と早川徳仁副社長。矢崎社長は、すでに生体エネルギーを導入していた様々な企業を、役員を連れて訪問する。北海道までも行ったそうだ。また、更なる実験も手掛ける。生体工ネルギー処理をしたステンレスの筒と処理をしていないステンレスの筒にもやしを入れ、2~3 ヶ月放置してみた。ここでも明らかな差が出た。生体工ネルギー処理をしたほうでは、溶けたもやしが匂いもなく澄んでいたのに対し、そうでないほうでは、どぶ臭く黒すんでいた。

 こういったプロセスを経て、反対していた役員も渋々ながら説得に応じ、2009 年に、水誘導翻訳装置「きわみ」Ml-62T、電気誘導翻訳装置「さとり」H-Wl2 を導入したのである。導入後も、半年から 1 年は社内がバタついた。しかし、その後は会社がまとまってきた。同じ方向を向いて進み始めた。売上もつながりができるようになり安定してきた。

 「社員一人一人の意識も変わった」と矢崎社長。社内の環境が変わったことによって、体調不良で休む従業員が少なくなっただけではない。導入する前と比べると、社員一人一人が自主性・責任感を持ってそれぞれの作業に取り組むようになった。問題解決も社員同士で意見を交わしながら、お互いに協力しながら解決していくことで作業効率も上がった。仕事に対しての誇りと情熱を持ち、楽しんで作業してくれるようになったとのこと。「これは今後の会社の発展にも何よりの効果だと言える」と彼は胸を張る。そして今、トーレイは、全社を挙げて生体エネルギー技術に取り組んでいる。最初は反対していた早川副社長が、この秋から新社長としてその陣頭指揮を執ることになっている。

(本記事は2017年に執筆されたものです)