「奇跡の桃」から「奇跡の新産業」へ

 生体エネルギーの技術を本家本元である農業において導入し、様々な問題を克服してできあがったのが芦沢農園の「奇跡の桃」である。

通販でも喜ばれる「奇跡の桃」

 桃は、傷みが早くクレームが多いため、通信販売ではあまり好まれない。しかし、クレームがほとんどない、常識では考えられない桃として、大手通信販売や、生協などで「もっと欲しい」と引っ張りだこ状態の桃がある。もちろん、食べた人の評判もいい。「こんなに美味しい桃は生まれて初めて食べた」という声もあれば、贈った相手に必ず感激されるので、毎年、お中元に使い続けている人もいる。

 この「奇跡の桃」をつくっているのが、「農業生産法人フルーツファームあしざわ」。山梨県山梨市、南に富士山を望み、桃と葡萄の農園が広がる後屋敷地区に 2 ヘクタールの農園を持ち、桃を中心に葡萄、柿を栽培している。ここで桃づくりを試みた芦沢一代表取締役は、いくつもの苦難に直面した。この地域は、火山灰土壌であるため、リン酸吸収係数が高い(珪酸アルミナからイオン化して離れたアルミニウムイオンがリン酸イオンと結合してリン酸アルミナになりやすい)。つまり、重要な栄養素( ATP や核酸を作るのに必要)であるリンをいくら撒いても土壌が吸収してしまい、根がそれを吸うことができない。美味しい桃が育たないのである。また、桑畑から転作したため、土壌に残っていたモンパ菌(紋羽病菌)が根っこに付き、それが原因で連作障害が起きる。さらに、窒素コントロールも難しく、土壌に窒素肥料を入れ過ぎると葉がもやもやする(栄養が枝や葉に行ってしまい、実に行かなくなる)。

 栽培に苦慮していた芦沢代表が、生体エネルギー理論に出会ったのが 1993 年のことである。生体エネルギーの農業資材「真和 X 」「 AEC 」を使うとそれが土壌のコンダクターになり、イオン化が抑えられる。その結果、土壌の「リン酸吸収係数が減る」、つまり「元素の能力が変わる」という現象を彼は目の当たりにした。もちろん、一般的な科学では実現不可能とされていることである。彼は一気に自分の圃場に生体工ネルギーを本格導入した。すると、他の問題も解決に向かう。「真和 X 」で環境を変えることで、支配する微生物の種類が変わり、放線菌主体の土壌になり、バランスが取れ、モンパ菌が悪さをしなくなる。また、生体エネルギーが高い環境は、植物が本来持っている遺伝子の仕組みに同調するため、実がなる成長(生殖成長)を優性に誘導できる。桃の葉や枝が窒素を食べ過ぎないようになるのである。

 その結果できあがったのが「奇跡の桃」である。「人の命と健康」を拠り所に、生体エネルギー技術を活用してつくられた桃は、糖度が高く食味が抜群なだけではない。たんぱく質のジスルフィド結合が強くなり、イオン化が抑えられるため、桃特有の果肉の変色や痛みが起こりにくい。他の桃ではだめだと言わせる商品、購入する人にとっては必須の桃になっている。また、畑においても、近年の高温でも劣化しにくいため、近隣の農家よりもゆっくり収穫できる。痛んでいないので、出荷できずにジュースに回されることもない。農協にいっさい頼らず、生産物の 全量を完売する体制が整っている。

贈り物としても絶大な人気を誇る「奇跡の桃」

農業から異業種へ

 芦沢代表はさらに、生体エネルギー理論と技術を社会に広く知らしめたいとの思いから、1996 年、有限会社源を設立( 2006 年、源株式会社に改称)。人に奨めるためには、まず、自分でやってみる必要があると考えた彼は、水誘導翻訳装置「きわみ」、電気誘導翻訳装置「さとり」を自社に導入。桃づくりの合閻に、10 年間、自ら研究、実践を続ける。地元山梨で、様々な業種の企業に「きわみ」の水を配り、使ってもらってデータを取ることもした。「さとり」の電気で加工したものを使ってのテストも行った。そして今、彼は農業を基礎として生まれたこの技術を多くの他産業に紹介し、アドバイザーとして新たな商品の開発に関わっている。

 そのひとつの例が、染髪用オキシクリーム「いたわり物語」である。髪を染めることは、髪を傷めることに直結し、健康にも悪影響があるとされている。異業種交流の集まりで、ヘアカラーをするときに髪が痛んだり皮膚がしみたりするという美容業界の悩みを聞いた芦沢代表は、これを生体エネルギーの技術で解決できるのではと思いついた。生体工ネルギーの農業には、植物をプラスにしながら酸素供給・殺菌等ができる技術がある。擦り傷などの殺菌で使用するオキシドールのように、過酸化水素を農業現場で酸素供給剤や殺菌剤として使うとき、一般的には葉に酸素障害(やけ)が出てしまう。HOX という生体エネルギー農業資材は、酸素の能力を高めた準拠位置が高い過酸化水素。生体工ネルギー理論では、エネルギーは、勾配によって準拠位置の高い方から低い方に、水が流れるように移動する性質があると考えられている。

 一般の過酸化水素は準拠位置が低いため、対象となるものから生体エネルギーを奪ってしまう。逆に HOX はエネルギーを対象に与えながら処理ができるので、相手をプラスにしながら殺菌できる。これを応用することで、染髪に使う過酸化水素を変えることも可能だと考えたのだ。生体エネルギー研究所の協力を得て、過酸化水素水を処理。結果、人にも髪にもダメージのない、むしろ髪にツヤが出て若返りの効果が見られるほどの商品が生まれた。染めれば染めるほど髪にツヤが出るという。美容師の手が荒れることもなくなり、施術する側からも重宝されている。

農業技術から生まれた染髪用オキシクリーム「いたわり物語」
元素と真摯に向き合う農業は全ての産業に通ずる

山梨では有名人?

 彼はまた、地元山梨の産業展示会「山梨テクノ ICT メッセ」に、もう 10 年以上、出展し、生体エネルギー技術を紹介し続けている。彼の紹介で生体エネルギー技術を導入した企業も多い。山梨市でアイスと中華まんじゅうを製造している冨士食品工業株式会社もそのひとつである。芦沢代表がサンプルとして提供した「きわみ」の水を使って試作したところ、これまでは「甘味が残ってキレが悪かった」アイスクリームが、「これだったらもうひとつ食べたい」ものに変身した。肉まんは、弾力性が強くなり、「押したら戻る」まんじゅうになった。すぐに「きわみ」を導入した。美味しくなるだけではない。殺菌に使っている塩素の臭いも消えた。電気誘導翻訳装置「さとり」H-W6 を導入したところ、それまで冷凍庫で保管していた食材の解凍後のドリップが酷かったのが、大幅に改善された。また、約 300 坪の冷凍庫内に霜も付かなくなった。さらに、水誘導翻訳装置「Ml-64」を導入したことで下水も変わり、課題であった汚泥の臭いも量も激減したのである。

 北杜市にある、信玄餅の老舗、金精軒に生体エネルギーを紹介したのも芦沢代表である。餅づくりに使う水に徹底的にこだわる彼らが出した結論が、水誘導翻訳装置「きわみ」であった。その「きわみ」の製造をいまー手に任されている、甲府市の株式会社トーレイは、芦沢代表が「さとり」の電気を使って溶接したステンレスでモヤシの劣化スピードが変わるのを実験して確認し、生体エネルギーの導入を決断した。北杜市にある株式会社内藤責金属製作所の「金属アレルギーが出ないアクセサリー」もまた、芦沢代表がいなかったら実現していない。

桃で法を説く

 苦労を重ねていた桃づくりで出会った生体エネルギーが、不可能を可能に変え、自分がやりたいことを実現させてくれた。芦沢代表の目的は、「人の命と健康」、「豊かさの実現」、そして「自然から求められる」ことである。生体エネルギー技術を使った産業・商品が増えれば増えるほど、環境が高まり、社会はその恩恵を受けることができる。だから彼は、今もなお、農業以外のさまざまな産業に、生体エネルギー技術を活用する重要性を説き続けている。

 彼のオフィスの本棚には、健康、科学、物理、経済、宗教哲学等、およそありとあらゆる分野の書籍が溢れている。広範囲にわたる分野の知識を独学で学び、実践経験を積み、さらにそれを前提条件として客観的な捉え方で分析している。生体エネルギー理論では、前提条件の充実は、目的の充実につながる。だからこそ、様々な業種の産業人から指導を求められたとき、彼は生体工ネルギー技術のアドバイスができるのであろう。

 しかし、それ以上に、彼は、「桃で法を説く」。桃の時期、芦沢代表の元を訪れた客は、当然のように桃でもてなされる。もちろん、皮ごと食べられるぐらい美味しい。しかし、それだけではない。何時間か経って帰るとき客は気付き、驚く。ナイフを入れたまま置いてあった桃の切り口がまったく変色していない。最初に切ったときと同じみずみずしさをまだ保っている。その桃こそが、長年、生体エネルギー技術を学び実践し続けた彼の成果であり、証でもある。何も喋らない桃が、最も雄弁に芦沢ーを語っている。

源株式会社には喫茶コーナーもある
ここで桃に説法を説かれるのも悪くない

(本記事は2017年に執筆されたものです)